Interview by Sharon Photographs by Jin Akaishi
MooRER – Lucio Innocenti, Fabio Innocenti
“Sharonと関係のあるゲストをお呼びして、様々な質問をし、より深く、より多くの事を知っていくこの企画。
第一回目は、現在日本で圧倒的な人気を誇り、丁寧な造りで多くのファンを魅了するダウンブランドMooRER【ムーレー】を探ります。ゲストとしてお呼びしたのは、MooRERの営業部長ルッチオ・イノセンティさんと、アジア営業担当ファビオ・ファラシンさんです。“
それではまず、自己紹介をお願い致します。
ルーチョ・イノチェンティ(以下、ルーチョ) MooRERのLUCIO INNOCENT(ルーチョ・イノチェンティ)です。営業部長をしています。
ファビオ・フェラチン FABIO FARRACIN(ファビオ・フェラチン)です。アジアの営業担当をしています。20年前からアパレルのアジアマーケットに関する仕事に付き、4年前からMooRERのアジア担当をしています。
MooRERはどのようにして生まれたのでしょうか?
ルーチョ
16年前、MooRERの前身となる会社がスタートしました。元々、現社長のモレノの母がダウンジャケット製造の下請けをしており、そこで培ったノウハウをもとにしてデザインを始めたのがきっかけでした。それが8年前の事です。モレノがデザイナーをし、母親が生産管理という、イタリアらしいファミリー企業としてスタートしました。
当初はスポーティなダウンウェアを作っていましたが、モレノ社長がデザイナーになってから、テクニカルな素材を使い、デザインやフィッティングに拘ったハイデザイン・ハイクオリティの商品を作り始めました。
何故そこまで品質にこだわるのでしょうか?
ルーチョ ラグジュアリーな物を作る為には細部にまで拘る必要があります。マテリアル・裏地全てに置いて、お客様に100%満足してもらうためにも、その必要が有ると我々は考えています。また、MooRERは現代のサルトリアの雰囲気も取り入れようと考えています。
ダウンブランドは数多く存在します。MooRERにとって競合他社との違いはありますか?
ルーチョ 競合する相手はいません。MooRERの様にラグジュアリーなダウンブランドは少ないと思います。特に我々程ハイクオリティ・ハイデザインに拘っているブランドはなかなか有りません。MooRERのアイデンティティは100%メイドインイタリー。本当に高級な物を作る事に拘りを持っています。
MooRERの考える、これからの世界戦略があれば教えて下さい。
ルーチョ 現在、売り上げは世界的にみても好調に推移しています。大変有り難いと思っています。7割強がイタリア以外で販売しており、メインのマーケットはアメリカ・ロシア・ドイツ・日本の4カ国です。 今後は、様々なデザインのモデルを展開したいと考えています。スポーティなものからクラシックなものまで、全てのシーンにおいて、MooRERだけで完結出来る様なブランドにしたいと考えています。 また、クオリティのレベルを保ちつつ、デザインにも拘る。人気になっても、クオリティが下がる様な事はしたくないのです。今のクオリティを保ちたい。レベルを下げたくないのです。
日本のマーケットの事は、どう思っているのでしょうか?
ルーチョ
日本のマーケットはとても信頼していますし、全国展開しているセレクトショップで扱われているので非常に満足しています。
イタリアのブランドが世界的な成長を得る為には、日本とドイツのマーケットが非常に重要です。逆に言えば、その2国で成功出来れば、他の国々でも受け入れてもらえます。
ドイツは品質について非常に厳しく、欧州で生き残る為の起点となるマーケットです。日本も品質については厳しいですが、日本のバイヤーは商品の品質や価値について、理解度が非常に高い。日本のバイヤーに認めてもらえれば、世界的にみても問題有りません。
日本では北は北海道から、南は九州まで売れていますので、もはや全国レベルですね。
ルーチョ
弊社(MooRER)のHPアクセス数は日本人とイタリア人のアクセスが最も多く、次はドイツ、アメリカ、ロシアの順番です。
日本人は最もHPにアクセスしてくれています。一日500人くらいです。とても有難いです。
ロシアではBARBIERIというモデルが売れていると聞きます。では、日本に適しているモデルがあれば、教えて下さい。
ルーチョ
ミディアムウェイトの商品が最も適していると思います。
ダウンジャケット程モコモコしておらず、見た目にも軽いモデルです。次のコレクションから色々なモデルを用意しています。番地、色見本をたくさん用意して、お待ちしています。
そういえば、よく問い合わせを受けるのですが、KM(ポリエステル)とLL(ウール/カシミア)では温かさに違いがあるのでしょうか?
ルーチョ 基本的にはグースの入っている量で温かさは変わりますが、生地の種類によっても温かさは変化します。
日本で最も売れているモデルはどのモデルでしょうか?
ルーチョ
SIRO-KMです。
KMの方がスタンダードで入門的な位置づけになっていますので。日本では着丈の短いモデルの方が人気があるようですね。
では、イタリア国内で売れているモデルは?
ルーチョ
MORRIS(SIROの着丈の長いモデル)です。SIROは3年前にMORRISのショート丈モデルとして登場しました。SIROも、もちろん人気がありますよ。
アメリカではMORRISとSIROの人気はいまいちですが、ヨーロッパやロシアでは非常に人気があります。
ちなみに、寒冷地のモスクワでは既にMORRISが完売してしまいました。
日本・イタリア・ロシアと、同じモデルに人気が集中するとは思ってもいませんでした。我々も驚いています。
次のコレクションではロングモデルがたくさん有りますので、是非ご覧下さい。
最後に、MooRERが製品造りにおいて、最も大切にしている事は何でしょうか?
ルーチョ
現代のスーツとクラシックなスーツでは、何が最も違うのでしょうか?それは、フィット感です。
私たちは、現代のスーツやジャケットに合うダウンを作ろうと考えました。
スポーティすぎても駄目ですし、クラシック過ぎても駄目。要は現代的なシルエットでありながら、エレガントさを醸し出す。これが私共が追い求めていたMooRERのスタイルなのです。
そして、MooRERは「自分達が本当に欲しいと思う物を作る」というところから出発しています。
それゆえ、ムーレーにとって終着点はありません。
常に新しい物を追求しています。「神は細部に宿る」ではありませんが、我々のコダワリは生半可ではありません。是非これからもご期待下さい。
クラシックなサルト物はルーズなシルエットの為、現代においては時代にそぐわない物になりつつ有ります。
しかし、そんなクラシックな物でも改良を重ねて、徐々に現代的なフィット感を得られる様になってきました。日本人は、手の温もりを感じられるもの、テクニックを感じられる物が非常に好きだと思います。
MooRERはその中でも非常にフィット感を大事にした商品を作ってくれているので、そのまま素晴らしい商品を作り続けてほしいです。
本日は、有り難うございました。