MONTESARO
THE INTERVIEW IL QUADRIFOGLIO
by Sharon Photographs by Jin Akaishi
久内淳史

こんにちは。
今日は神戸からわざわざ有難うございます。

イル・クアドリフォーリオのオーダー会を始めてまだ1年も経たないですが、どう思っていらっしゃるのか本音をお聞きしたいと思いまして、こういった機会を設けさせて頂きました。
普通こういったインタビューは、第三者を交えてやるものなのかもしれませんが、久内さんの人柄を知る我々が行なった方が、お客様にとっては親近感が涌くと思いました。内々な感じにならないように気をつけますので、普段通り、関西弁丸出しでぶっちゃけて下さい。
まずはブランドの紹介と、ブランドネームの由来を教えて下さい。

久内  フィレンツェの伝統技法をもとにした靴と革小物のオーダーブランドです。クアドリフォーリオというブランド名は「四葉のクローバー」を意味していまして、自分のイニシャルと縁起を担いでこのブランド名にしました。

靴作りを目指したきっかけは何ですか?

久内  もともと服の販売をしていて、靴と時計の担当をしていました。それで靴に興味を持って色々と調べてる時に、あるイタリア靴のオーダー会の制作現場を見て、本格的にやりたいと思ったのがきっかけです。

イタリアに行く前から自分で靴を作っていたのですか?

久内  元々は小さな工房で婦人靴の職人をしていたんですが、やはり本格的な紳士靴をやりたいと思いまして。もうイタリアに行くしかないと思いましたね。

もともとは紳士靴ではなかったのですね。修業先をイタリアにしたのは、そのイタリア靴の影響ですか。

久内  そうですね。イタリアの雰囲気や見た目の華やかさに惹かれました。

そのイタリア靴がウゴリーニで、修業先に選んだというわけですね。

久内  実は、違います。ビスポークを専門に扱っている工房に入りたかったというのがまずあって、そういう面で良い意味で商売っ気のない工房で修行したかったんです。フィレンツェに行ったのは、やはり靴や革が有名だったのはあります。色々修業先を見て回りましたが、本人がせっせと作っているウゴリーニに惹かれて門を叩きました。

ウゴリーニでの修行はどうでしたか。やっぱり大変だったのでしょうか。

久内  最初の1年くらいは大変でしたね。言葉や食生活などの環境面です。仕事自体はがむしゃらにしてましたし、そこまで大変だった記憶はないですね。2度とはしたくないですけど。

il Quadrifoglio

お金の面とか、どうしてたんですか。

久内  お金もある程度貯めてからイタリアに行きましたが、すぐに底をついたので、夜は飲食店で深夜まで働いてました。イタリアは夜が長いので、遅くまでやってるんですよ。

深夜まで?それで仕事してって、凄いハードですね。

久内  当時はそれが当たり前だと思ってました。日中やった作業中の物がどうしても気に食わなくて、バイト終えた深夜1時2時から仕事場に戻って、縫い直したり良くしてましたよ。

え!?そんな時間から!?

久内  やっぱり向こうで働けるだけでもラッキーですし、独立する職人なんて皆そうですよ。出来なければ、明日から来なくて良いって言われる世界ですからね。明日働ける保証なんて何もないですし。向こう行って何も得られなければ、それこそ悲惨でしょう。

なんとなく想像してはいましたが、やっぱり厳しい世界ですね。軽はずみに職人になりたいなんて言えませんね。今日お持ち頂いたコートは、そんな大変な修業時代を共にしたものですか。

久内  イタリアで買ったものはボロボロになってしまったので、さすがに捨てましたよ。今着ているのは、毎年イタリアへ革の買い付けに行ってますんで、そのついでに買って来たものです。

イタリアでは、みんなコート着て仕事してるんですか?

久内  そうですね。あっちでは靴に限らず職人はみんな身につけてます。制服っていうわけではないですけど。珍しいですか?

エプロンじゃなくてコートなんだなと思いまして。雰囲気ありますね。ヨーロッパの職人さんのワークスタイルってなんだか惹かれるんですよね。仕事着であちこち汚れているのに、その汚れもかっこ良く見えるというか。久内さんの話を聞いていると、職人の生き様が汚れ方から出ているんじゃないかと思えます。

さて、今まで3回オーダー会をやってみたわけですけど、どうですか。手応えとか感じられていらっしゃいますか。

久内  びっくりしましたね。すごいお店だなと思いました!お客さんにとって良い物をという接客スタンスはすごく共感が持てます。

久内さんの靴は海外での反応もかなり良いってお聞きしています。

久内  たまたま独立2年目で海外から話が来たので、それに乗っかれたのは大きかったでしょうね。最近はイタリア人のオーダーを頂いたりしました。それは本当に嬉しいことでしたね!

本場の人に認めてもらえるのは、この上ない喜びでしょうね。実際お店に久内さんのサンプルを置いておくと、お客様の反応が凄く良いんですよね。「何足までオーダー出来るの?」みたいな話になることもある程です。

久内  とても有難いお話ですね!ただ、手作りのものなので、正直制作数には限りがでます。ご配慮頂ければ幸いです。

そうですよね。足数にも限りがありますもんね。うちとしてはガンガン作ってもらいたいんですが。。年間足数ってどのくらいですか?

久内  今一緒にやってくれている方が2人くらいおるんで、70足前後でしょうか。2人とも師匠(ロベルト・ウゴリーニ)の弟子だったということもあって、やりやすいですね。

オーダー会の時に一緒に持って来てくださる小物も評判が良いんですが、奥様が作っていらっしゃるんですよね?

久内  そうです。これはフィレンツェ伝統工芸で、縫い目のない作りをしています。革の吊り込みと似ている製法ですね。今ではベルトも嫁さんが作っています。

ご家族で二人三脚なんて素敵ですね。久内さんの靴って珍しい貴重な革が多いので、ベルトのオーダーもかなり入りますからね。 そうそう、久内さんの靴で使用している革ですが、どこで仕入れてくるのでしょうか。革の種類も豊富に揃えてらっしゃいますよね。やっぱり独自のルートがあるのしょうか。

久内  基本的にスムーズやスエードなどはイタリアのエージェントを通して直接個人で輸入しています。やはりモノは格段に良いですから。それとは別に年に1〜2回程度買い付けにも行ってます。日本に入ってこない革は本当にたくさんありますからね。

il Quadrifoglio

毎回オーダー会用に珍しいもの探して来てくれますよね。この姿勢がお客様に喜ばれる要因の一つですね。 きっと靴作りの上でも、こだわりはたくさんあるんじゃないでしょうか。イタリア靴らしい色っぽい作り込みをしますが、意識していらっしゃるのでしょうか?

久内  色っぽいとは良く言って頂けるのですが、特に意識して靴作りをしているわけではないんですよ。師匠のロベルトは、曲線に男らしい色気を感じさせるつくりをしますけど、僕はそもそも婦人靴のデザインをしていたということもあって、曲線の使い方がもっと繊細になると思います。あえて意識しているとすれば、そういう自分のフィルターを通すということなのかもしれません。

それは、新しいデザインを作り出すということですか?

久内  新しいデザインとか革新的なものっていうとモードになってしまうじゃないですか。靴のアッパーでそれを表現しようとすると、クラシックではなくなってしまいます。僕の場合はクラシックなデザインの中に、自分らしさを生かせればと思っています。車やバイクのデザインが好きなので、それをベースに作る事もありますが、あくまでもクラシカルな範疇の中で、細部に意匠というか、表現出来る事を心がけています。

なるほど、だから金具(バックル)やソールに至る細部まで、細かな仕事ぶりが見られるわけですね。ヒールカップからヒールへの曲線や、タイトなウエスト等は曲線の繊細さが出ているところですよね。技術的な面でもこだわりってあるのでしょうか?

久内  そうですね、、ウゴリーニではアッパーに縫い跡が残らないようにするとか、針目を細かくするとかはありましたけど、やっている事は世界標準だと思います。それに、こだわったつくりを追求したら、英国の老舗にはかないません。求めるものが違うような気がします。イタリアの靴って履き口(トップホール)が広めにとられてるんですけど、これは重厚感を無くして軽く見せるためです。イタリアの温暖な気候のせいもあって、涼しげに見せるための工夫なんですけど、素足で履いたら足首が綺麗に出て、色っぽく見える。そういうイタリアの土着的な工夫ってスーツも同じじゃないですか。イタリアの物の良さって、きっとそういうところだと思います。僕はたまたまウゴリーニで修行出来たわけですが、これをベースにしつつ、より立体感を出したり、土着的なものを無くしていったりしているので、技術的な側面よりも、やっぱりデザイン面を重視しているのかもしれません。

採寸が凄く細かいのは師匠譲りですか。

久内  いや、師匠は不安になるくらいざっくりしています。それできっちり上げるのが凄いところなんですが。僕はとにかく正確に足の形をとらえる事に力を注ぎます。そこから、デザイン的にどこに肉付けをして、どこに削り込みを行なっていくか、検討をつけます。座った時と立った時とそれぞれ採寸を行なうのも、正確にとらえる為です。

その正確さが、驚く程の履き心地につながっている訳ですね。

久内  やっぱり、デザイン云々の前に履いて頂かないわけには良さも知ってもらえませんので。攻めたデザインにするためにも、正確に足の形をとらえる事が必要です。

今後オーダーを検討しているお客様の為に、久内さんの考えるオーダーの醍醐味を教えて頂けますか。

久内  オーダーは、突き詰めると嗜好品ですよね。これをどう楽しんで頂けるかを常に考えています。珍しい革を集めるのもその一環です。靴をつくる過程を、どれだけ楽しめるかというプロセスに醍醐味があると思います。ただ、残念ながら僕とお客様の趣味趣向が合わないというのは絶対に出て来てしまいます。人間なので。だからこそ、フレキシブルに対応する事を心がけています。もし、その嗜好品づくりに僕を選んで頂けたら、本当に嬉しいですし、それには全力でお答え致します。

最後に、今後の展開について考えていらっしゃることがあれば教えて下さい。

久内  正直なところ、今はビスポークでより精度を上げることで精一杯ですね。デザインすること自体は好きなので、ゆくゆくは既成でスリッポンなどのオフ用の靴を作りたいですね。

今後の展開も含め、これからが本当に楽しみです。我々もお客様に久内さんの靴の良さを一生懸命伝えていきたいと思います。本日は有難うございました。

久内淳史
il Quadrifoglio

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